東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)105号 判決
1 請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。
2 そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。
(一) 原告は、本願考案は、分割形材1、2からほぼ直角に延びた係止部材としての脚片3、3、4、4の端部を更にそれぞれほぼ直角に折込んだ構造のものであるのに対し、引用例記載の考案では、係止リブ(くさび状のロツク用リブ)60は、その基部で変形されて、ロツク部材58のほぼ三角形状の凹所に係合しているものであつて、本願考案とその構成が著しく相違していると主張する。
しかしながら、成立に争いのない甲第三号証、同第七号証によれば、本願考案は、分割形材1、2と成形断熱材8とを一体に結合するための構造に関するものであるが、その結合については、本願考案の要旨である実用新案登録請求の範囲に、二つの分割形材1、2の間に嵌装される「成形断熱材8に形成される凹溝9内に前記脚片3、3、4、4の端部をそれぞれ折込んで形材1、2と成形断熱材8とを一体的に結合してなる」と記載されているにすぎないから、原告主張のように係止部材としての脚片の端部をほぼ直角に折込んだ構造のものに限定されるわけのものではない。他に、本願考案が右の限定を必須の構成要件の一つとするものと解すべき資料はない。
一方、成立に争いのない甲第二号証によれば、引用例記載の考案も本願考案と同じく分割形材(金属製部材)と成形断熱材(プラスチツク製ロツク部材)とを一体に結合する構造に関するものであり、その第6図及び第7図に示されたものは、係止部材(くさび状のロツク用リブ)60の基部を変形してその先端と成形断熱材(プラスチツク製ロツク部材)58に形成される凹所とを係合していることが認められる。
そして、本願考案のように係止部材としての脚片の先端を折込んだ構造のものと、引用例記載の考案のように係止部材の基部を変形して係止部材の先端を止着すべき凹所に係合した構造のものとは、いずれも分割形材と成形断熱材とを一体に結合するものであり、その作用効果に格別の差異があるということはできない(前掲甲第三号証、同第七号証によれば、本願考案の明細書には、作用効果について、第三頁第二行ないし第六行に、「この考案の断熱サツシバーの構造によれば、従来に比べて構造が簡単であるとともに、その組立ては分割部材の脚片を成形断熱材の凹溝に折込むだけでよいので、作業工数を著しく削減するなどの効果がある。」と記載されているにすぎず、前記一体的な結合において引用例記載の考案と比べ格別の差異があることについては何らの立証もない。)うえ、一般に、実用新案登録出願は、物品の形状、構造又は組合せに係るものであるところ、本願考案においては、係止部材としての脚片の先端を折込むための構造自体について、考案の構成要件として特定のものを規定しているわけでもないことを考え合せるときは、右構造のうちいずれを選択するかということは、単なる設計的事項にすぎないというべきである。
(二) 原告は、本願考案の奏する作用効果について、引用例記載の考案は、単に係止リブ60を折曲して凹所に併合するだけであり、分割形材54、56とロツク部材58とを引離す方向の外力に対する抵抗力が弱いのに対し、本願考案は脚片3、3、4、4の端部を凹溝9内に折込んでいるので、引用例記載の考案と比較していずれの方向の外力に対しても抵抗力が強いと主張する。
しかしながら、係止リブを折曲して凹所に係合する構造のものと、脚片の端部を凹溝内に折込んだ構造のものとは、前述のとおり、分割形材と成形断熱材とを一体に結合する点においては格別の差異があるということはできないから、本願考案と引用例記載の考案とが原告主張の抵抗力に関して顕著に相違するということはできない。
(三) したがつて、端部を折込んだ脚片と係止リブを折曲したものとの間には格別の差異は認められず、かつ、その構成の相違によりもたらされる効果においても格別のものが認められないとした審決の判断は正当であり、本願考案は引用例記載の考案と同一というべきであるから、審決にはこれを取消すべき違法はない。
3 よつて、審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとする。
〔編註〕 本願考案の要旨は左のとおりである。
間隔を置いて対設される二つの分割形材1、2の相対向する面にそれぞれ一対の脚片3、3、4、4を突設し、これら分割形材1、2の間において前記脚片3、3、4、4によつて形成される空間内に合成樹脂、合成ゴムなどの成形断熱材8を嵌装し、かつ、この成形断熱材8に形成される凹溝9内に前記脚片3、3、4、4の端部をそれぞれ折込んで形材1、2と成形断熱材8とを一体的に結合してなる断熱サツシバーの構造。